デイヴ・シンクレア「マキノ」

英国ロックには、カンタベリー・シーンと呼ばれる系譜がある。一般には英国南東部のケント州カンタベリー出身者達による音楽集団を指し、ソフト・マシーン とキャラバンという2つのバンドを源流として、関係者が複雑に入り乱れ、多くのバンドや、ソロ活動が展開されてきた。音楽的にはジャズ・ロック~プログ レッシヴ・ロックという分類で、日本にも熱心な愛好者がいる。私が大好きな半身不随の歌い手ロバート・ワイアットや、叙情派のキャメルもその潮流を形成し ている。

2年前、滋賀県近江八幡市の友人・西村明氏から次のようなことを聞かされた。

西村「元キャラバンのキーボード奏者、デイヴ・シンクレアさんが京都にいるんですよ」、私「観光ですか? 長期滞在ですか」、「それが、2005年に京都 に移住されたんです。ツアーで来日したときに好きになったらしいですわ」、「へー、いいお話ですね。それは何とかしないともったいないですね」、「ええ、 既に日本でも独自に動いておられまして、このマキシシングルの『MAKINO(マキノ)』という曲は滋賀県高島市マキノ町のことを彼が曲にした美しい作品 です」。

ということで拝聴したその曲は、それはもう美しく素晴らしいものだった。英語と日本語のバージョンがあり、どちらも女性の澄んだ歌が聴ける。「~太古へ続く森を抜けて/あの道の向こう/湖(うみ)が見えたなら/きっと帰ろうマキノ、マキノ」。

マキノ町にある日本の友人の別荘に招かれ、その風景が深く心に焼き付いてこの曲を作ったということで、地元の道の駅などでCDは販売された。シンクレア氏は、夏のマキノの野外イベントにも地元の合唱団とステージに立ってこの曲を披露している。

また彼は、11年10月のNHKFM「今日は1日プログレ三昧再び」で日本人アーティストを引き連れて約1時間スタジオ・ライブをやっていた。日本でのよき理解者・支援者を得ているようで、誠に喜ばしいことだと思う。

「マキノ」は今夏発売のアルバム「ザ・リトル・シングス」でも聴ける。西村氏の最新情報では同アルバムの世界発売が決まったとの由。佳曲「マキノ」が全世界に広まることを期待してやまない。(小西昌幸)